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「本当にこれでいいのか?」
元々ITビジネス業界で働いていたクリストファーは日々のルーティンに不満があり、現状に対する漠然とした違和感を持ち続けていた。彼の地元アルツァイで小さなワイナリーを家族で経営していた叔父の訃報とともに彼の人生の大転換が訪れた。叔父はいくつかの区画のワイン畑を残し、彼の後を継ごうと考える身内はいなかった。クリストファーは硬直した日常に息を吹き込むべく、自分がワイナリーを新たに発足させる決断をする。当時、全くワイン造りに関しての知識がなかった彼は実質0からのスタートを切ることになる。2013年にヴィットマンで実習を受けながら、ガイゼンハイムで醸造について学び始めた。その間、時間が空いている時に叔父の畑を手入れする日々が続く。2017年に学校を卒業し、すぐにビオディナミ農法への転換を開始。既に2014年の時点で、不介入主義的なワイン造りに惹かれ、2020年には彼の満足のいく転換を果たすことができた。

アルツァイはラインヘッセンの南西に位置しており、ラインヘッセンでよく見られるレス土壌、石灰岩土壌に加え、アルツァイには「メラフュール」(黒ヒン岩)という火山性土壌が存在する。クリストファーが所有する主な畑はアルツァイの西側にある区画「アルツァイァー・ローテンフェルツ」だ。斜面になっている畑の下部にはレス土壌があり、その部分にはピノ系品種が植えられ、黒ヒン岩が存在する区画にはリースリングが植え られる。村の西側には巨大な石灰岩の岩盤の上に広がる「ローマーベルグ」という畑があり、ここではリースリングとシュペートブルグンダーが植えられている。アルツァイの西側にある村ワインハイムでは泥灰土や赤土の上でシルヴァーナーが栽培されている。

「メラフュール」はドイツ国内でこのアルツァイ周辺からナーヘ地方でしか見られない。この痩せた土壌はブドウ樹の成長速度を抑え、それ故果実はとても小さくなり、凝縮感と強調されたアロマがあるワインが造られる。この火山性土壌と砂質及び石灰岩土壌の影響で彼のワインには鉱物を削って混ぜたような強いミネラルのニュアンスが出る。まだワイン造りを始めて間もないことから、彼は色々と試行錯誤を重ね、微調整をしながら自分が求めるワインを追求している。実際にワイナリーで古いビンテージを試飲すると、「少し前は自分が打ち出したい味わいに迷いがあった。」という彼の発言が理解できる。
「今では自分がこういう味わいにしたいというより、ブドウ樹のサポートをする役に徹したいという気持ちが強い。このアルツァイの土地の味わいをクリアにワインに表現させることができたら何よりも嬉しいよ。」樽試飲させてもらった瓶詰めを待つワインは、彼がいうようにより肩の力が抜け、余分なものを削ぎ落としている。彼の今後が楽しみでならない。

基本データ
 [国・地域]
Rheinhessen, Germany (ドイツ・ラインヘッセン)

[地区]
Alzey(アルツェイ)

[代表者]
Christopher Barth(クリストファー・バート)

[栽培面積]
6ha